
プレイ時間がとれずに長らく放置していた『つよきす』をようやくコンプ。
いやもう、面白いのなんの。
やればやるほど面白さが増すのでコンプしてからも延々とプレイしていたり。
萌えとかツンデレとかいう以前に、キャラがみな素敵すぎ。特にフカヒレ、クオリティ高すぎ。
「姉しよ」もそうだったけど、とにかくきゃんでぃそふとの作品は雰囲気がいい。
いろいろな作品のネタをパクったりもしているが、そのネタの膨大さにはただただ圧巻。
呆れるというよりむしろ、よくぞここまでネタを詰め込んだとひたすら敬服。
知っているネタが出てきたときは思わずニヤリとしたし、遊び心を感じてとても楽しめた。
Hシーンで大爆笑したなんて、エロゲやってて初めてだったし。
「姉しよ」の頃から思っていましたが、ライターのタカヒロ氏は、
日常描写のテキストがそんじょそこらの萌えゲーとは比較にならないくらい上手い。
もちろん、日常描写が面白いということはキャラが魅力的なのはもちろん、
それに加えて、キャラの配置や舞台構成が巧みということ。
きゃんでぃそふとの作品の最大の魅力は、その人物配置と舞台設定、
そしてそこから発生する一般シーン全てにこそあるわけですが、その点においては、
姉しよ時代よりもさらによく練られた上質なものになってます。
言うなれば、物語自体の構成が上手いのではなく、
ただ、単純に会話上における掛け合いを描いていくのが上手い。
設定がキャラを作るのではなく、物語そのものがキャラを作っている感じ。
いや、キャラが物語を引っ張っていく過程で、キャラが自己を露わに暴れ回っていると言うべきか。
シナリオ全体は特別秀逸と言うほどではないけれど、文章のテンポが非常に良く、
特に各キャラ第一部は見事な出来で、掛け合いや笑いもツボでかなり楽しめた。
良作と言われるゲームはサブキャラが魅力的な物が多いと思ったが、「つよきす」の場合、
スバル、フカヒレ、平蔵、村田、土永さんといったサブキャラだけでなく、
立ち絵のない店長や蟹マダムまでもが強く印象に残るほど存在感を放ちまくり。
日常の面白さが共通ルートだけではない、というのは大きな評価を与えていいと思う。
それと、各ルートに他ルートで語られる要素が少しずつ盛り込まれているのも◎
普通なら学校行事などである程度共通シーンを入れるのだろうが、
同じ体育武道祭でも完全に別物として書かれているところは非常によかった。
大抵のゲームなら共通ルートとして扱われそうなイベントもプレイ毎に楽しめた点は評価できる。
プレイ毎にどんどん楽しくなってくるゲームは久々だったので。
「日常シーンがたるい」という作品は多々あるが、これだけ日常シーン“しか”描いていないのに
楽しい作品というのは、あまり無い。シナリオ重視が主流となった今日のエロゲAVGで、
このタイプのライターの存在は実に貴重な気がします。
たぶん、このライターのテキストは、そのまま文字だけ読んだだけではそれほど楽しめないと思う。
(ボイスがある)ゲームテキストは、キチンと台詞回しを考えておかないと、
キャラクターが設定にそってしか台詞を喋らなくなってしまう。
特に、主人公とヒロインの二方向にしか人間関係がない作品などは最悪。
小説と脚本に求められるスキルが似ているように見えて、かなり違うのはそのため。
小説は読めればいいですが、脚本は話せないと意味がない。
脚本作りは、意外とよく喋ったモン勝ちな気がするし。
その意味で『つよきす』は「この面子集めて日常シーンが面白くなかったらそりゃちょっとヤバイ」
というレベルの声優陣を揃えたのは、流石に良い仕事をしたと言うしかない。
カニなんかまともに喋るだけでもキツそうな台詞が続く中、キンタ女史は実にいい仕事っぷりを
しておられます。台詞にテレが全くないし。まさにキャラと一体化しているような感じ。
その豪華声優人の効果もありますが、退屈とは無縁のアクティブ感に溢れていて、かつ人と人との
関係を根深いところまで匂わせられる上質な日常テキストこそ『つよきす』最大の魅力でしょう。
結果としてこの作品は、ネタを知っていて相乗効果を狙い、グラフィックと画面効果を
プラスすることで、ようやく“ゲームエンターテイメント”として完成するのではないかと。
ゲームテキストだけが突出していないし、タカヒロ氏が考えるテキストは、
グラフィック&ボイス&ゲームシステムがあることが前提なのだと思う。
特別感動したわけではないし、めちゃくちゃエロかったわけではないけれど、
日常の何気ないやりとりがとにかく面白い。エンターテイメントとはこうでなくては。
最後にシナリオとキャラの私的ランキング。
■シナリオ
よっぴー>なごみ>カニ>姫>乙女さん>祈先生
■キャラ
乙女さん>なごみ>カニ>よっぴー>姫>祈先生
まずシナリオですが、好みだけなら間違いなくなごみルートなのですが、キャラの魅力を
抜きにしてシナリオだけをみると、やはり一番熱かったのはよっぴールートかなと。
よっぴーに対して怖がらず、最後までよっぴーの側に居つづけ、理解してあげようという
主人公の真摯な姿勢に胸を打たれたので。蟹シナリオの時の行動とはえらい違いっぷり。
よっぴーシナリオに関しては賛否両論ありそうだけど、他のシナリオで感じられなかったリアリティが
あって良かった。尺は短いが内容的には一番感動した。このルートの主人公は尊敬に値する。
ちなみにキャラの1位は
乙女さん。 いやもう、きゃんでぃそふとの姉キャラは完全にツボでして。
普段は厳しい乙女さんに褒められるとどうしようもなく嬉しくなったし。あのアメとムチ感が堪らない。
それに料理や機械全般が苦手など、かわいらしいところがあるのもグッド。
ただ、乙女さんがツンデレかどうかは激しく微妙だったりしますが。
ツンデレという点では、なごみのように『孤立・交友拒絶タイプ』で初期は心底からの嫌悪、軽蔑、
反発、無関心などのネガティブ反応だったのが、何らかのきっかけで一転して熱烈な行為へと
質的変化を起こす臨界型のツンデレというのが私的にもっとも好きなタイプだったり。
この手のタイプは主人公への対応が厳しく、打ち解けるまでは非常に苦労しますが、主人公への
ツンが激しければ激しいほど、また、打ち解けるまでに苦労すれば苦労しただけ反転時の見返りが
大きいのがポイント。変化の幅が大きいだけに、その言動も極端から極端へと走る傾向があり、
デレ状態に入ってからは「貴方がいなければ世界の終わり」というほどの盲目的溺愛へと陥る
ケースが多々あるし。(なごみはまさにこのパターン)
ツンデレキャラの分類としては他に、
■初手で仲良くなり一時デレに移行するが、喧嘩や隠し事の暴露など
何らかのアクシデントにより一旦ツンの壁が生じ、それを乗り越える
ことでより深いデレ関係と至る「雨降って地固まる」の再構築型。
■心の中心にあるデレを、ツンの外殻によって覆い隠している
「ホントは好きだけど素直になれない」の外殻剥離型。
■何かしらの事情があって、不用意でもわざとツンツンして相手に
接しなければならない「知られちゃいけないこの気持ち」の偽装型。
など様々なタイプがありますが、やはりツンとデレのギャップが激しい臨界型が私的にベスト。
このタイプは反転時に態度や口調も一転するのでその反応の差を見るのが実に楽しいし。
その点でなごみは申し分なく、素晴らしいツンデレでございました。
PS2版のほうも今から楽しみで仕方ない。
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